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地震時に杭抜き跡の埋戻し地盤はどう動く?「強さ」ではなく「変形追随性」で考える耐震性

日本は世界有数の地震多発地域であり、建物や土木構造物の耐震設計は高度に体系化されています。ところが、杭抜き後の埋戻し地盤については、これまで主に「施工時に安定しているか」という観点で検討されることが多く、地震のときにどう挙動するかはあまり議論されてきませんでした。

しかし都市の再開発が進むにつれ、既設杭を撤去した跡の地盤が、将来の新しい構造物を支える地盤の一部になるケースが増えています。埋戻し地盤も周辺地盤と同じように地震動を受ける要素として考える必要があります。今回は、杭抜き後の埋戻し地盤を耐震挙動の観点から整理します。

地震時に地盤の中で起きていること

地震動が地盤に入力されると、地盤内部ではせん断変形(ずれ変形)が繰り返し発生します。地盤は鉄やコンクリートのような均質な弾性体ではなく、粒子の集合体(粒状体)であるため、振動に伴って力の伝わり方が変化し、局所的にひずみが集中することがあります。

特に重要なのは、地盤の中に剛性の異なる材料が存在する場合です。剛性差が大きいと地震時の変形量に差が生じ、その境界部にせん断ひずみが集中しやすくなります。これは特定の材料が優れている・劣っているという話ではなく、材料特性の違いから生じる力学的な現象です。

地震動による繰返しせん断で、固化体を含む地盤では境界にひずみが集中し、締固め天然土は周囲と一緒に変形するイメージ図
図1:地震時、固化体は周囲と変形量が異なり境界にひずみが集中する。周囲と同じ粒状体なら一緒に変形する

固化体を含む地盤の挙動 ― 剛性不連続部で何が起きるか

セメントミルクや流動化処理土は硬化後に比較的高い剛性を持ちます。このため小さな変形の範囲では安定性が高く、施工直後の地盤の支持性能を確保するうえでは有利に働きます。

一方、地震時のように周囲の地盤が大きく変形する状況では、固化体と自然地盤の変形量に差が生じます。周囲の地盤が塑性的に(元に戻らない形で)変形するのに対し、固化体はほとんど変形しないため、境界部で力の再配分が起こります。剛性が不連続になる部分は、地震後の局所的な沈下や地盤の変状に関与する可能性があると指摘されています。

「硬いほど良い」わけではない ― 変形追随性という評価概念

近年の耐震設計では、「強度」だけでなく「変形性能」が重視されています。建物の設計で、壊れないことだけでなく粘り強く変形して地震エネルギーを吸収することが求められるのと同じ発想です。地盤においても、周囲の変形にどれだけ追随できるか、すなわち「変形追随性」が重要視されつつあります。

自然地盤の材料は、粒子同士の再配列によって変形を吸収するため、周囲の地盤と比較的同調した挙動を示します。この特性は地震時の応力集中を緩和する方向に働くと考えられます。つまり耐震性とは「硬いほど良い」ものではなく、「周囲とどのように一緒に変形するか」という観点で評価されるべきものです。

液状化のおそれがある地盤では

地下水位が高い緩い砂地盤では、地震時に間隙水圧が上昇して有効応力が低下し、地盤が液体のように振る舞う液状化が起こることがあります(「液状化とは?」参照)。このとき周辺地盤の剛性は急激に低下するため、その中に剛性の高い柱状体があると、剛性差はさらに大きくなり、地盤の挙動に影響を与えやすくなります。

液状化のおそれがある砂層に固化体がある場合と、締固め天然土がある場合の比較図
図2:液状化のおそれがある砂層の中では、剛性差が挙動に影響しやすい

一方で、砂質土は密度が高いほど一般に液状化しにくくなります。締固めによって密度を高めることは、地盤改良における液状化対策の基本的な考え方のひとつです(「液状化対策に有効な地盤改良工法」参照)。杭抜き跡の埋戻しにおいても、周辺の土質との関係を考慮した材料選定が望ましいといえます。

埋戻し設計の考え方の変化

従来の地盤改良や埋戻しでは「強度を上げること」が主目的でした。しかし現在は、次のような観点が加わりつつあります。

  • 周辺地盤との一体的な挙動
  • 地震時の変形の連続性
  • 長期的な安定性

これは性能規定型設計への移行とも整合する考え方で、材料単体の絶対性能ではなく、地盤システム全体としての挙動が評価対象になっています。

周辺地盤と一緒に動く埋戻し ― BFS工法

当社の「BFS工法」は、砂分40%以上となるよう配合した天然土(現場発生土+山砂など)を杭抜き孔に投入し、専用ドリルで最深部から鉛直・水平方向に締め固める埋戻し工法です。セメントを使わず、周辺地盤と同じ粒状体で、周辺地盤に近い密度・強度に復旧するため、地震時にも周囲と同調して変形しやすい地盤をつくります。

天然土による埋戻し技術「BFS工法」

BFS工法 施工写真

既存杭引抜き孔などの狭隘な空間に天然土を投入し、専用ドリルで強力に締め固めることで、天然の地盤により近い高品質な埋戻しを実現する工法です。

性能評価試験では、原地盤(関東ローム)のN値3〜6に対し、埋戻し地盤の換算N値2〜4程度を確認しています。周辺と極端に硬い柱をつくらず、かつ緩い土のまま残さない――この「ちょうどよい密度」に締め固めることがBFS工法の狙いです。

BFS工法の詳細はこちら

まとめ

杭抜き後の埋戻し地盤は、将来の地震に対して周囲の地盤と一体となって挙動することが望ましいといえます。材料選定では次の点を意識してください。

  • 必要な支持性能の確保
  • 周囲地盤との剛性バランス
  • 地震時の変形追随性
  • 長期的な地盤の安定性

耐震性とは単なる強度の比較ではなく、地盤全体の挙動として評価されるべきものです。用途や地盤条件に応じた適切な材料選択が、合理的な判断につながります。

液状化のおそれがある地域での杭抜き・埋戻し計画についても、お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら(TEL 03-3851-8555)

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