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「将来掘れる地盤」という考え方 ― 再開発を見据えた杭抜き後の埋戻しとライフサイクルコスト

高度経済成長期に整備された建築物やインフラが更新期を迎え、既存施設の解体・建替えを伴う再開発事業が全国で増えています。これに伴い、既設杭の撤去と地盤の再利用は一般的な施工プロセスになりました。

従来、杭抜き後の埋戻しは「工事が終わった時点で安全であること」を目的に計画されてきました。しかし都市の利用周期が短くなった今、地盤は「一度施工したら終わり」ではなく、「将来また施工される可能性を前提とした基盤」として捉える必要があります。今回は「可逆性(Reversibility)」という概念から、杭抜き後の埋戻しを考えます。

都市の利用周期は短くなっている

かつて建築物の想定使用年数は50〜60年以上とされることが一般的でした。しかし近年の都市部では、用途変更や事業更新によって30年前後で建替えが行われる事例も珍しくありません。同じ敷地で複数回の基礎工事が行われる可能性が高まっているのです。

建設・供用・解体杭抜き・埋戻し・再開発が繰り返される都市の利用サイクル図
図1:同じ敷地で工事が繰り返される時代。今日の埋戻しが、次の工事の地盤条件を決める

つまり、いま施工している埋戻し地盤は、将来の施工環境を左右する要素になります。このような背景から、施工時の合理性だけでなく「次の工事への影響」が検討事項として認識され始めています。

固化体による埋戻しは「不可逆的な地盤改変」

セメント系材料による固化処理は、地盤を安定させる有効な手法であり多くの施工実績があります。一方で、硬化した後は地盤の性状が恒久的に変わるため、再掘削時には通常の地盤とは異なる施工条件になります。固化体は時間の経過とともに強度が増進する場合もあり、「一時的に空隙を安定させる」はずの埋戻しが、結果として半永久的な人工地盤を形成することになります。

これは施工上の問題というより材料特性からくる当然の結果ですが、近年の地盤工学分野では、このような不可逆的な改変を伴う施工について、ライフサイクルの視点で評価する議論が行われています。

次の工事で起きること ― 再掘削と新設杭への影響

将来の再開発では、埋戻し地盤に対して次のような影響が生じる可能性があります。

  • 掘削機械への負荷増大・ビットやオーガーの摩耗
  • 作業時間の増加と工期の延長
  • 騒音・振動の増大と対策費の追加
  • 新設杭の打設位置と固化体が重なった場合の杭の傾斜・施工障害
  • 上記に伴う工事コストの上昇
固化体が残った地盤で新設杭が傾斜するリスクと、天然土で戻した地盤で通常どおり施工できるイメージの比較図
図2:固化体が残った地盤では新設杭が偏った抵抗を受けやすい。周囲と同等の地盤なら通常どおり施工できる

特に新設杭への影響は見過ごせません。埋戻し部の強度を周辺地盤より極端に高くしてしまうと、新設杭の打設時に偏った抵抗を受けて杭が傾斜したり、施工品質や工期に悪影響を及ぼしたりします(杭打ち工法については「杭打ち工事とは?場所打ち杭工法の種類」参照)。これらは現在の施工段階では顕在化しませんが、都市更新が進むほど重要な要素になります。

可逆性(Reversibility)という概念

環境工学や持続可能性の分野では「可逆性」という考え方が注目されています。将来、元の状態に戻す、あるいは再利用しやすい状態を維持しておくという発想です。地盤における可逆性を考えると、次の要素が重要になります。

  • 将来掘削の容易さ
  • 周辺地盤との連続性
  • 再利用可能な材料性状
  • 過度な人工改変の抑制

天然土を用いた埋戻しは、周囲の地盤と類似した性状を保つため、将来施工時の条件変化が比較的小さいという特徴を持ちます。杭抜き後の埋戻しの本来の目的が「撤去前に近い地盤状態を回復すること」だとすれば、可逆性はその目的と直結する評価軸です。

初期費用だけでなく、ライフサイクルコストで考える

施工計画は一般に初期工事費で評価されがちですが、近年は建設から維持管理・更新までを含めたライフサイクルコスト(LCC)の考え方が重視されています。国のインフラ長寿命化の方針でも、整備段階だけでなく維持管理・更新段階まで含めたライフサイクル全体で社会資本を評価する考え方が示されており、この視点は地盤形成にも適用できます。

従来の評価軸(施工性・即時安定性・初期コスト)と、これからの評価軸(将来更新性・可逆性・環境負荷・ライフサイクルコスト)の比較図
図3:埋戻し材の評価軸は、従来の軸を否定するのではなく拡張しつつある

埋戻し材料の評価軸は、「施工性・即時安定性・初期コスト」から、「将来更新性・地盤の可逆性・環境負荷・ライフサイクル合理性」へと拡張しつつあります。これは特定の材料を否定するものではなく、用途・条件に応じた最適な選択の重要性を示すものです。

「将来掘れる地盤」を今つくる ― BFS工法

当社の「BFS工法」は、セメントを一切使わず、現場発生土や山砂などの天然土のみを専用ドリルで締め固めて杭抜き跡を埋め戻す工法です。埋戻し後の地盤は周辺地盤と同種の土であるため、将来の再開発時には通常の地盤と同様に掘削・杭打ちができ、固化体による施工障害を残しません。

同時に、固化材を使わないため養生期間が不要で、天然土を投入して締め固めた時点で埋戻しが完了します。電気・水・プラント設備も不要で、アースオーガー搭載機と油圧ショベルのみで施工できるため、狭い現場にも適用できます。「今の工期を短縮する」ことと「将来の工事を楽にする」ことを同時に実現できる点が、ライフサイクルの視点でのBFS工法の合理性です。

天然土による埋戻し技術「BFS工法」

BFS工法 施工写真

既存杭引抜き孔などの狭隘な空間に天然土を投入し、専用ドリルで強力に締め固めることで、天然の地盤により近い高品質な埋戻しを実現する工法です。

概算で1日あたり100m(杭長10mなら10本)の埋戻し処理が可能です。専用ドリルはφ300〜1,000mmをφ100mm単位で用意しており、杭長に制限はありません。専用ドリルのレンタル・リースにも対応し、アースオーガー経験者であれば1日程度で技術習得が可能です。

BFS工法の詳細はこちら

まとめ

杭抜き後の埋戻しは、今回の工事を完了させる工程であると同時に、将来の土地利用条件を形成する行為でもあります。材料選定では次の視点が重要です。

  • 現在の施工における安全性と確実性
  • 周辺地盤との調和性
  • 将来施工(再掘削・新設杭)への影響
  • ライフサイクル全体での合理性

「将来掘れる地盤」という考え方は、再開発が常態化した都市において合理的なインフラ形成のひとつの方向性であり、今後の埋戻し施工における重要な検討要素になると考えられます。

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