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コラム

杭とは?目的や素材、支持方法の違いについて

基礎杭イラスト

杭は地盤改良や建築物の基礎を支えるために欠かせないものですが、目的や素材などによってさまざまな種類があります。今回は、そもそも杭とは何なのか、歴史も踏まえ解説していきます。

 

杭とは?

鋼杭(2)

杭とは、やわらかい地盤の強度を上げ、その上に建設される建物が傾いたり、沈み込んだりしないよう地中に打ち込まれる柱状の構造物です。杭にはさまざまな分類方法がありますが、今回は目的と素材、そして支持方法という観点から杭についてご紹介します。

 

杭の目的

杭は地盤の強度を上げ、建築物の傾斜や沈下を防ぐために利用されます。目的別に大きく分けると、杭には地盤改良杭と基礎杭の2種類があります。

 

地盤改良杭

地盤改良杭はその名の通り、地盤改良を目的とした杭です。軟弱地盤の液状化を防いだり、建物を支えるために必要な地盤強度を確保するために利用されます。固い支持層まで杭を打ち込んだり、杭と周辺地盤の摩擦力を利用したりすることによって、軟弱地盤を補強します。

 

基礎杭

一方、基礎杭は建物の傾斜や倒壊を防ぐために利用される杭ですが、地盤改良杭との大きな違いは、建物の基礎部と杭が接合している点です。

 

先日の令和6年能登半島地震では、鉄筋コンクリート造りの7階建てビルが倒壊し、隣接していた木造家屋を押しつぶすという被害が発生しました。輪島市の該当地域はもともと地盤がやわらかく、建物を支えるために基礎杭が採用されていましたが、今回の被害では、その基礎杭が地震によって損傷を受けた、あるいは抜けたために、上部の建物が倒壊したと考えられています。本来、建物の傾斜や倒壊を防ぐために利用される基礎杭ですが、大規模地震により大きな揺れが生じると、杭の傾斜や損傷に伴い、上部の建築物も被害を受けることがあるため、特に建物が古い場合は注意が必要です。

 

杭の素材

木杭

木杭

杭の中でも木杭はもっとも歴史が古く、 その始まりは紀元前約5000年頃といわれています。日本国内では、1198年、鎌倉時代に現在の神奈川県で建設された「旧相模川橋脚」が日本の歴史において初めて利用された杭だとされています。地中は酸素が薄いため、木の腐食が進みにくく、基礎に適した材料として明治以前まで広く利用されていました。

 

鋼杭

鋼杭

明治時代の近代化とともに徐々に鋼製、コンクリート製の杭が利用されるようになり、1950年代以降、杭は木杭から鋼杭、コンクリート杭へと変化を遂げます。戦中の乱伐の影響で森林が荒廃したことから、1955年、環境保全を目的とした木材資源利用合理化方策が制定され、これ以降、木杭の利用は大幅に減少しました。

 

鋼杭は垂直方向、水平方向ともに耐久力が高く、1960年代には大量の鋼杭が製造され、高度経済成長期の急速な発展を支えました。現在でも鋼杭は広く採用され、H鋼杭や鋼管杭などの種類があります。

 

コンクリート杭

コンクリート杭

コンクリート杭は鋼杭とともに、近代化が進むにつれて普及した杭の種類です。コンクリート杭には、現場で製造、打設する場所打ち杭と、すでに製造された杭を現場に運び込み、打設する既製杭の2種類があります。

 

場所打ち杭

場所打ち杭とは、現場で造られる杭のことを指します。まず杭を打つ箇所に孔を掘り、鉄筋かごと呼ばれる筒状の入れ物を作製し孔に挿入、そこに生コンクリートを流し込み固化させます。場所打ち杭は既製杭に比べ、現場で臨機応変に細かい調整ができ、また、材料のみを運び込めばよいため、運搬の手間がかかりません。しかし、現場で杭を製造するため、コンクリートの固化に時間がかかり、既製杭に比べ工期が長くなります。

 

既製杭

既製杭とは、あらかじめ工場で製造された杭を現場へ運び、打設する杭の種類です。現場では、搬入した杭を打設するだけで済むので、場所打ち杭より工程数が少なく、短い工期での作業が可能です。しかし、既製杭は事前に製造された杭を運搬するため、車両などの関係で杭の長さに制限があります。既製杭で長さが足りない場合は、継手をし既製杭を繋ぎ合わせるか、場所打ち杭を利用する必要があります。

 

杭の支持方法

支持杭と摩擦杭の違い

杭は支持方法によって、支持杭と摩擦杭の2種類に分類できます。

 

支持杭

支持杭とは、杭先端を支持層という固い地盤まで打ち込むことで上部の建築物を支える杭です。軟弱な地盤では、浅い基礎で構造物を支えることができないため、地中深く杭を打ち込む支持杭で地盤の強度を上げます。支持層は場所によって深さが異なるため、杭先端部が支持層まで到達しているかしっかりと確認する必要があります。

 

摩擦杭

摩擦杭とは、杭と地盤の摩擦力によって上部の建築物を支える杭です。支持層がかなり深く、支持杭の打設が難しい場合に採用されることが多いです。摩擦杭は杭の長さが支持杭に比べ短いため、費用が安くなります。しかし、液状化リスクのある地盤では、地震発生時、地盤が液状化してしまうと摩擦力が働かず、杭は水中に浮いたような状態になってしまうため、摩擦杭による支持力補強は適切とはいえません。

 

さいごに

建設分野において欠かせない杭ですが、目的や素材によってさまざまな種類があることがお分かりいただけたと思います。地盤の支持力を上げるために杭は大きな役割を果たしますが、建築物の解体時、杭の残置や埋戻し不良など、杭に関わる問題が多く発生しているのも事実です。次回以降のコラムでは、解体に着目し、杭抜きや埋戻しの現状、そして理想の処理方法などについて解説していきます。

関連事業
天然土による埋戻し技術

既存杭引抜き孔などの狭隘な空間に天然土を投入し、専用ドリルで強力に締め固めることで、天然の地盤により近い高品質な埋戻しを実現する工法です。

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