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コラム

杭引抜き孔の埋戻しの重要性

工事イメージ

日本では、高度経済成長期に整備されたインフラ設備や建築構造物の老朽化が進み、それらの持続可能な維持管理が急務となっています。1964年に開催された東京オリンピックに向け整備された東京国際空港や首都高速道路、また東海道新幹線などがその例です。さらに、東日本大震災などの自然災害による防災意識の高まりや、復興に向けた建物の再建の需要は今後より一層高まると考えられます。今回は、解体から再建への土地循環における重要な役割を担う杭抜きと埋戻しについて解説します。

 

なぜ杭撤去と埋戻しが重要なのか

杭引抜き孔イメージ

日本の都市の多くは軟弱地盤上に位置しているため、構造物の基礎には杭基礎が採用され、都市部の地中には無数の杭基礎が存在しています。杭基礎のうち、構造物の解体撤去後に地中に残されたものを〝地中既存杭〟といいます。

 

地中既存杭は基本的に産業廃棄物として扱われますが、地中での残置や引抜き撤去後の埋戻し不良など、適切に処理されていないことが多くあり、そうした地盤では地盤沈下が発生するだけでなく、残置された既存杭は、土地売却などの際に瑕疵としてトラブルの原因となります。また、地中に残された杭の存在は、その後の新設杭の打設や山留め工事の際、その工期や品質に悪影響を与えるため、地中既存杭の引抜き撤去は、土地活用や未来の資産形成のためにも重要な要素といえます。

 

こうした背景から、構造物の解体撤去後に土地活用を計画する場合、新たな構造物の基礎や山留め壁などに杭が干渉しないよう、地中既存杭を確実に引き抜く必要があります。

 

杭撤去と埋戻しの現状

基礎工事イメージ

既存杭の引抜き撤去には高額な費用を要し、かつ見えない地中での作業であるため、過去数十年間にわたって大きな技術革新がありませんでした。現場技術者の経験頼りなところが多く、また、地中既存杭の引抜き撤去に関する法律やガイドラインなども存在しないため、杭の引抜きで発生する様々な問題の原因や改善点なども不明瞭のままです。

 

杭引抜き後、引抜き孔を適切に埋め戻さないと地盤沈下などの不良地盤の原因となります。そのため、杭の撤去後は充填材などによる埋戻し処理が必須です。現在埋戻しに使用されている充填材には、天然材料として土、またセメント系材料として流動化処理土やセメントミルクがあります。

 

埋戻しに使用する充填剤の種類

土

土による埋戻しは、施工が簡単で費用が抑えられることが利点ですが、転圧(力を加えて空気を押し出し、密度を高めること)が困難であるため、安定した強度を確保できません。また、原地盤より緩い状態の土を埋め戻したことにより、埋戻し部の沈下が発生した事例や、大雨の影響で沈下や陥没が生じたケースもあります。

 

流動化処理土

土

建設発生土

水

セメント

セメント

流動化処理土は、建設発生土と水とセメント系固化材を混ぜて作る充填材です。建設発生土を用いるため、地球資源の浪費を削減するリサイクル材でもあります。流動化処理土は液体状であるため、狭い空間への流し込みが可能で、また、セメント成分の固化後には強度が増すため、締固め不可能な空間でも強度を発揮することができます。

 

しかし、流動化処理土は外部施設からの搬入となり、固化作用のため搬入時間に制限があります。そのため、使用できる現場は限られ、施工状況に合わせての打設が難しいという課題があります。その他にも、セメントはアルカリ性物質のため、流動化処理土で埋め戻した地盤はアルカリ性を呈し、植物の生育を阻害します。また、セメントにはクロムという物質が含まれており、これが土と混ざることで六価クロムという汚染物質が発生するリスクもあります。

 

セメントミルク

水

セメント

セメント

セメントミルクは、水とセメントを混ぜた充填材です。流動化処理土同様、液体状であるため狭い空間への流し込みが可能で、かつセメント成分の固化後には強度が増すため、締固め不可能な空間でも強度を発揮することができます。また、配合するセメントの割合によって強度の調整も容易にできる上、汎用のプラント設備で作業できるため、現場に合わせて適宜作製することが可能です。

 

しかし、セメントミルクは、水とセメントの材料分離によって強度が不均一になったり、地下水の浸入による強度低下や固化不良などの問題があります。また、流動化処理土同様、アルカリ性物質であるセメントミルクで埋め戻した地盤はアルカリ性を呈し、植物の生育を阻害するほか、セメントに含まれるクロムという物質が土と混ざることで六価クロムという汚染物質が発生するリスクもあります。

 

天然土による埋戻し技術「BFS工法」

杭抜き孔の埋戻しでは、充填材の強度が原地盤の強度に対して小さすぎると、地盤沈下を引き起こす原因となるため、充填材の強度を原地盤と同程度にし、地盤の復元性を高めることが重要です。

 

締固めによる強度確保

当社の埋戻し技術であるBFS工法は、土による埋戻しの課題であった締固め(転圧)を可能にした工法です。

 

特許を取得している専用ドリルを用いて埋戻し部を締め固めることで、天然土のみで十分な強度を発揮します。埋戻し処理では、引抜き孔の全長にわたって均一な埋戻しを実現することが重要ですが、流動化処理土やセメントミルクを使用した従来工法では、杭孔上部からの流し入れの際の空気流入や孔の壁面崩落による土塊の混入が原因となる空隙の発生などの問題点がありました。

 

BFS工法は、杭孔上部より土を投入し、水平・鉛直両方向に転圧が可能な専用ドリルで強力に締め固めるため、深度方向に関係なく強度を発揮することができます。

 

セメント不使用で地盤環境にやさしい

セメント系充填剤は、地盤のアルカリ化や六価クロムの溶出といった地盤汚染のリスクがあります。アルカリ化した地盤では、鉄などの要素が不溶化し、植物は生育に必要な養分を根から吸収できなくなります。一方、六価クロムは発がん性物質であり、土壌汚染対策法で定められた特定有害物質です。 

 

BFS工法は、天然素材である土のみを使用するため、こうした地盤汚染を発生させません。また、コンクリートがらなどの地中埋設物を残さず、その後の土地利用に悪影響を与えないという利点もあります。BFS工法は、解体から再建への土地再利用の循環の輪を繋げる地盤環境に配慮した埋戻し工法です。

 

 

さいごに

建築物解体後の杭抜きや埋戻しは、その重要性に関わらずいまだ適切な処理方法の確立がされていません。当社のBFS工法は、従来工法の抱える課題を解決する新技術として開発されましたが、杭抜きや埋戻しにおいては意識改革を含み、改善の余地がまだまだ多くあります。今回のコラムを通して、建築物解体後の処理の重要性について一人でも多くの方々に理解していただければ幸いです。

関連事業

既存杭引抜き孔などの狭隘な空間に天然土を投入し、専用ドリルで強力に締め固めることで、天然の地盤により近い高品質な埋戻しを実現する工法です。

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