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コラム

地盤と構造物の関係

建設現場の空撮

構造物は、地盤の上に建設されるため地盤の影響を強く受けます。構造物を支える地盤が緩いと、上部に建つ建築物は傾斜したり倒壊したりなど、大きな被害を受けます。そのため、都市開発や宅地造成などあらゆる構造物の建設時には地盤について多くの検討が行われます。今回は、そうした地盤と構造物のかかわりを紐解いていきます。

 

地盤の成り立ち

地球の内部構造

地球は、中心から、核、マントル、地殻という層構造に なっていると考えられています。このうち、もっとも地球表面に近い地殻と上部マントルの上部は硬い板状の岩盤となっており、これをプレートと呼びます。

 

地殻は地下50~60kmの深さに存在し、おもに火成岩からできています。火成岩は地表面近くの温度や風などの気象条件や、水、動植物の影響を受け、風化します。地盤とは、岩盤やこうした風化作用を受けた土が複雑に層を成したものの総称として使われています。

 

風化作用を受けた土は、もとの場所にとどまる場合(残積土)と、水や風によって別の場所へ運ばれる場合(堆積土)があります。堆積土のうち、およそ一万年前までに堆積した土は沖積土と呼ばれており、河口付近や平野部に多く見られます。沖積土は礫、砂、シルト、粘土、腐食土、火山灰質土(ローム)などからなり、日本の多くの土地はこの沖積土の上に位置しています。

 

地盤と構造物の関係

土の種類

土イメージ

風化作用により削られた土は、粒径の大きさ別に、礫、砂、シルト、粘土と分類されます。

 

礫…粒径2mm以上の粒子

砂…粒径2mm~0.074mmの粒子

シルト…粒径0.074mm~0.005mmの粒子

粘土…粒径0.005mm以下の粒子

 

粒径の大きな礫や砂は、土粒子同士が互いにかみあうな構造になっています。そのため、土粒子間の隙間を水がほぼ自由に移動でき、水はけがいいのが特徴です。一方、シルトや粘土などの粒径の小さな土は、小さな土粒子同士が引力や荷電の影響を受けて蜂の巣状に配列されています。この粒子間の間隙に水が閉じ込められるため、シルトや粘土は水はけが悪いのが特徴です。

地盤が構造物にあたえる影響

地盤と建物イメージ

地盤の強さ

地盤の強さは、土の種類や深さだけで一様に決まるものではなく、地下水の水位や地中の含水量など、さまざまな要因が絡み合って変化します。地盤の支える力を意味する地盤支持力も、構造物に使用される基礎の種類や荷重方向によって変わるため、評価が困難です。

 

地盤の最大の特徴は、その状態を直接見ることができない点にあります。そのため、災害時など被害が起きた場合、実際に地面を掘り起こして確認しないと原因がわからないことも多くあります。ほかにも、構造物の建設時、対象地盤が緩いと判明した場合は、地盤を締め固めたり、セメントと土を混ぜ合わせて強度補強を図ったりといった地盤改良を行いますが、このような基礎工事では設計通りに施工できているかの確認が困難です。そこで、電気や音波などを利用し、地盤内を見える化する技術の開発が進んでいます。

 

圧密沈下

地盤は、荷重を載せすぐに変形する場合と時間経過とともに徐々に変形する場合とがあります。荷重を載せてすぐに地盤沈下が起きれば、施工中に気づくことができ、対策もできますが、施工完了後、数か月、数年単位で徐々に沈下した場合は対処が非常に難しくなります。このようにゆっくりと起こる地盤沈下は圧密沈下と呼ばれていて、建築物の荷重により少しずつ水が押し出され、地盤が沈下していきます。そして、地盤沈下とともに上部に建つ建物は傾いたり、ひどい場合は倒壊したりといった被害が発生します。

 

地震

地盤は地震により大きな影響を受けますが、構造物の安全性はその地盤の挙動に大きく左右されます。すべての物体には固有振動数と呼ばれる、振動しやすい固有の振動数があります。地震時、地震の振動数と構造物の固有振動数が近ければ構造物はより大きく揺れます。構造物は地盤の振動により揺れますが、その構造物がまた地盤を振動させることもあります。逆に、地盤が構造物の振動を弱めることもあり、このように地盤と構造物は互いに密接な関係にあります。

液状化

構造物は、液状化により大きな被害を受けます。液状化の発生条件は三つあり、緩く詰まった砂地盤であること、砂地盤が水で飽和していること、そして大きな地震動の発生です。液状化被害が沿岸部の埋め立て地に多いのはこうした理由からです。緩い砂地盤に構造物を建設する際は、液状化対策として地盤を締め固めたり、セメントを混ぜて強度を上げたりする地盤改良が必要となります。

さいごに

構造物を建設する際、地盤の考慮は欠かせません。しかし、地盤の評価は強度だけでなく、さまざまな気象条件のもとでの性質の変化やその挙動までをも考慮に入れなければなりません。十分な検討がなされていないと、災害時に建物の傾斜や倒壊を招き、甚大な被害をもたらします。地中の状態は複雑である上に、目で見て確認することができないため、いまなおこうした課題を解決するためさまざまな技術の開発がされています。今回は、私たちの安全な生活を支える地盤がどのように構造物と関わっているのか、その密接な関係についてご紹介しました。

 

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