Article

コラム

アスファルト舗装によるヒートアイランド現象への対策

アスファルト舗装によるヒートアイランド現象への対策

今年も猛暑が続きますが、都市部では特にヒートアイランド現象による気温の上昇が進んでいます。中でもアスファルト舗装された地面の蓄熱による夜間の気温上昇は著しく、連日早い時間帯からの気温上昇が取り沙汰されています。今回は、そんな都市部独特の現象であるヒートアイランド現象と舗装の関係について詳しく解説します。

 

ヒートアイランド現象とは?

気象庁_ヒートアイランド現象の概念図

出典:気象庁 ヒートアイランド現象の概念図

ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が周囲の郊外や田園地域に比べて高くなる現象のことを指します。この現象は、主に都市化による影響で引き起こされます。緑の多い地域出身の方は、夏休みに帰省した際に東京より涼しく感じる、ということを経験したことがある方も多いかもしれません。

地面や建物からの輻射熱

都市部では多くの地面がアスファルトやコンクリートで覆われており、これらの素材は熱を吸収しやすく、夜間になっても放熱しにくいです。また、ビルなどの建物も太陽光を浴び、熱されることで輻射熱を発します。

人工排熱

エアコンの室外機や自動車の排気ガスなどに含まれる熱によって大気が過熱されます。

建物の密集による風速の減衰

都市部には高層ビルが密集しているため、風が遮断され、熱がこもりやすくなります。

緑地の減少

都市化に伴い、緑地や森林が減少し、植物の蒸散作用による冷却効果が失われます。

こうした要因が組み合わさることで、都市部の気温は周辺の郊外よりも数度高くなり、夏季には特に顕著になります。近年、都市計画や環境対策においてヒートアイランド現象の抑制が重要な課題となっています。

舗装の材料

ヒートアイランド現象の大きな要因はアスファルトなどの舗装による放射熱だといわれています。ここからは、舗装に着目し、材料や舗装にできる熱対策について解説していきます。

 

舗装に使用される材料の中でもっとも一般的なのは、アスファルトですが、公園や広場などでは、アスファルト以外の舗装も施されています。こうした舗装材料は使用用途別に機能面や価格、またデザインを考慮し採用されています。

 

アスファルト舗装

駐車場 アスファルト

国内の道路の約80%がアスファルトでできています。(参照:国土交通省 道路統計年報)コストが抑えられるという点とコンクリートに比べ工期が短いという点から、アスファルト舗装は高度経済成長期に大きくシェアを拡大させていった背景があります。アスファルトは熱に反応し硬化するため、140~160℃で敷設、その後転圧し、50℃以下になれば通行可能となり、施工期間が短く済むとても利便性の高い材料です。また、車両での通行時に乗り心地がよく、また排水性も比較的良いという特徴もあります。

 

しかし近年、アスファルト価格の高騰もあり、コスト面での優位性は薄まりつつあります。また、強度においてはコンクリートに劣るため、コンクリート舗装に比べ轍(わだち)ができやすかったり、ひびが入りやすかったりと補修工事が必要な材料でもあります。

コンクリート舗装

トンネル コンクリート

日本では諸外国に比べ、コンクリート舗装の割合が低いです。その理由として、コンクリートは固まるまで日数を要し、通行可能になるまでに時間がかかることが挙げられます。しかし、アスファルトとは異なり、強度が高い上に劣化しにくいという特徴があるため、長期間大規模な補修が不要というメリットがあります。そのため、交通量の多い道路や補修工事の困難なトンネル、急な坂道などでは、コンクリート舗装を採用し、メンテナンスを最小限にする工夫がされています。

ブロック系舗装

ブロック 舗装

ブロック系舗装は、インターロッキングブロック舗装や平板舗装、レンガ舗装、天然石舗装などを路盤や基盤上に敷設した舗装です。路盤(舗装表面の層である表層と基層の下にある層で、上部から伝わる荷重を支え、分散させる役割を有する層)の上にブロックを敷いて施工します。アスファルト舗装やコンクリート舗装に比べ手間がかかりますが、ブロックの色調や形状、素材感によりデザイン性のある空間を創り上げることができることから、主に遊歩道や広場、駐車場などで利用されます。

土系舗装

園路 土系舗装

土系舗装は、自然の土を主原料としてセメントなどの結合剤で固めた舗装です。適度な弾力性と透水性を備えているだけでなく、保水性を有しているため路面温度の上昇を抑える効果もあります。自然本来の風合いを活かした景観の良さから、公園や遊歩道、神社の参道などに適用されています。

樹脂系混合物舗装

樹脂系混合物舗装

樹脂系混合物とは、アクリル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ樹脂といった樹脂系結合材料に顔料などを混合し着色したものを指します。通常、結合材料であるバインダは無色ですが、色付き顔料を混ぜることでカラーリングを可能にしています。樹脂系混合物舗装の表層は、その名の通り樹脂系ですが、強度がないため、主に歩道に多く使用されています。

アスファルト舗装の構成

アスファルト舗装の構造

アスファルト舗装は、表層、基層、上層路盤、下層路盤、路床から成っています。路床とは、舗装の下の約1mほどの自然土を指します。もともとの地面であるこの路床の強度によって、舗装の厚さが決まります。路床土が軟弱な場合は、まず路床部分に改良工事を施してから舗装の施工に入ります。

 

路盤とは、表層と基層から伝わる荷重を支え、分散させる役割をもつ層です。下層路盤には、岩石を破砕機(クラッシャー)で砕いたクラッシャランと呼ばれる砕石を使用します。上層路盤には、粒度調整工法や歴青、セメント、石灰安定処理などにより安定処理を行います。安定処理とは、土砂にセメントや石灰などを混ぜ、支持力を高めることをいいます。上層路盤に採用される粒度調整工法では、粒度をそろえた粒度調整砕石を敷き、転圧します。粒度のそろった砕石を用いることで、下層路盤のクラッシャランより高い支持力を発揮します。

 

表層と基層には、加熱アスファルト混合物を使用し、層を形成します。110~140℃のアスファルト混合物を敷きならし、鉄輪のロードローラーで初期転圧をします。その後、ゴム製のタイヤローラーで二次転圧し、アスファルト層を均一に締め固めていきます。最後に仕上げ転圧が終了後、舗装表面の温度が約50℃以下になったことを確認し、交通解放します。

ヒートアイランド現象への対策

遮熱性舗装

国土交通省_遮熱性舗装

2002年に開始された「環境舗装東京プロジェクト」に伴い、センターコアエリアと呼ばれる首都高速中央環状線の内側を中心に遮熱性舗装と保水性舗装の採用が推し進められています。

 

遮熱性舗装とは、アスファルト舗装の表面に赤外線を反射する作用のある遮熱材を塗布し、路面が熱を吸収するのを防ぎ、路面温度の上昇を抑制する舗装です。この特殊塗料には、再帰性反射材である中空セラミックが含まれており、特殊塗料と再帰性反射材それぞれが太陽光を跳ね返します。

保水性舗装

保水性舗装

保水性舗装の研究は1992年から開始され、2002年以降、国土交通省や東京都の推進プロジェクトによって、東京都を中心に施工面積が急増しました。

 

保水性舗装は保水性が高く、通常のアスファルト舗装に比べ、舗装内部に比較的多くの水分を蓄えることができます。舗装内の水分が蒸発する際の気化熱冷却により、路面の熱が奪われ、路面温度の上昇を抑制します。

 

アスファルト舗装の表層に、粒度の粗い開粒度タイプアスファルト混合物を敷き、その空隙に保水力のある材料を充填します。保水材には、給水性ポリマーや鉱物質のグラウト(空隙に注入する流動性の液体)などを使用します。一般的なアスファルト舗装に比べ、真夏の日中で約10℃路面温度が低下するといわれています。

 

さいごに

毎日その上を歩く舗装ですが、よく見れば場所によって使用されている材料が違うことがわかります。特に近代以降の急激な都市化により発生したヒートアイランド現象を受けて、舗装技術は日々進化しています。特に東京都では遮熱性舗装と保水性舗装の整備が進んでいるため、お住まいの地域周辺にそうした道路がないか調べてみるのもいいかもしれません。


上部へスクロール